菩提の家理事長通信令和元年11月

菩提の家理事長 理事長通信

 冬の足音が聞こえだす季節になりました。日の落ちるのも早く、寒さと暗さに体が慣れずに体調を崩しがちになります。家でも暖房器具などの準備が不十分で本格的な冬の訪れに向けてまだまだぼんやりしている頃です。インフルエンザも例年より流行が早く猛威を振るうことでしょう。去年は一家全員かるーくインフルエンザに罹りました。今年は何とかしのぎたいものですがなにぶん子どもが3人いるとどこかで必ず貰ってきます。インフルエンザの分かち合いもそれはそれと言うことで。

 古代エジプトの遺跡の中からパピルス(古代の紙)が発掘され、それにはこう書かれていたようです。「近頃の若者はけしからん。俺が若い頃は、、、」と象形文字で書かれていたと言います。現代の日本でも新卒を採用する際「近頃の新卒者は社会人になるには社会に出てから2,3年はかかる。」などと社会人の先輩ら方は言います。私も立場上、求人採用を行います。翌年度の求人の為に大学を周るわけです。数多くの就職課の先生方とお話をさせて頂く中で学生の文化習慣など学生の生態の一部を知る中で私はこの責任転嫁の無限のループのような若者批判現象から抜け出したく思いました。一概にも若者が悪いわけではないことに気付いたような気がしたからです。現在の若者たちを取り巻く環境は、整った労働環境、個人主義、個人情報保護などの徹底されたコンプライアンス。極めつけはスマホ。社会に守られています。人は弱い生きもので、強くなるためには強い人の真似をしたり、立派な人から教えを乞いますが。そう言う風にしたのは社会的立場の高い人間たちです。何か起きた時に自分の身を守るためにこしらえた決まり(法)です。骨抜きになるような社会を作りそして自ら批判をする。愚かにもほどがあります。「大人」がもっと考える時です。

 「近頃の若者はけしからん。」と思えるのは何が原因なのか。近頃の学校ではどのような教え方をしているのか。近頃の親子のありかたは。生活習慣と環境。何を期待しているのか。何を心配しているのか、自分と何がずれているのかなど、全て理解するのは無理としても若者の生活を少しだけでも知ろうとする試みが大事であると感じます。些細なことからすぐに否定せず「いっぺん見たろか。」と言った具合に管理職などにある立ち場の人間は好奇心を持って若者を知るべきだと思います。

 そして、若者の能力の低さを批判することが自らの管理育成能力を否定していることに気付かないといけません。私は若者の不出来より上の立場の人物の能力の低下の方が問題であると思います。自己防衛を優先し、規則決まりの徹底を図ることに過ぎれば若者の動きを封じてしまいます。「なんとかかんとかマニュアル」みたいなものは私から言わせれば管理側の人間の自己防衛と責任転嫁と無能の象徴に見えます。悪いものではありませんがあくまでこれらは「参考」です。私の経験上あらゆる現場で起きる問題はマニュアル通りで解決できないものばかりです。だから管理職が居るわけです。そして過度に制限された中で任務にあたる閉そく感は成長にはつながりません。成長させる土壌は豊かであるべきです。失敗しないように指導するのも必要ですが、ある程度のリスクも抱えながらチャレンジさせるのも必要です。そして人を育てるのは後者の方です。要は、上司の人間性が問われるところです。「人間性」とは何かは私のような人間性のない人間にははっきりとわかりませんが、「優しさ、思いやり、情熱、寛容、仁義、任侠、忍耐力、先見性」などを周りの人達が感じ取ることが出来る人物なのかなと思います。見事に「規則決まりマニュアル管理主義者」の真逆ですね。人は人の心で育て、心で育った人がまた人の心を育てるのでしょう。難しいですがこのつながりは絶対にあきらめてはいけません。

 私は古代エジプトで発掘されたパピルスの著者のようにだけは絶対になりたくありません。